シャッフル飲み会

第十六回シャッフル飲み会

シャッフル飲み会当日、あらぶる感情を抑え、私はつとめて平静を装った。
顔を洗い、歯を磨き、髪を整え、自転車で出勤した。会社につくと荷物を置き、PCの電源を入れ、メールチェックする。
オーケー、いつもと同じだ、問題ない。

シャッフル飲み会の日は、いつも鼓動が高まり、失神寸前まで追い込まれ、命からがら会場にたどり着き、1杯目の生ビールでなんとか息を吹き返す、というのが常の私が、これほどまでに感情を抑えるのにはわけがあった。

今回のシャッフル飲み会は、激しく高ぶってはいけないのだ。
なぜなら明日朝早いから。朝早くから仕事があるから。

ジーザス、この事実は私にとっては死の宣告に等しかった。
明日のことを見据え、飲み方をセーブする酒なんてミネラルウォーターにも劣る、ということは酒の神バッカスに言われるまでもなく自明の理!神よ!
でも今日はダメ。明日早いからね!いきりたって深酒して、寝坊なんてしたらもう社会的な信頼は地に落ちるよ!余生を這いつくばって生きることになるよ!

そう言い聞かせているうちに1次会はつつがなく終了した。
社長の「散!」の合図と同時に、私は内なる葛藤を抱えながら家路を急ごうとした。

次の瞬間、車道の反対側から声がした。
「ちょっとだけいくか」
社長であった。我が社のCEO。元帥。首長。つまり社長であった。
この言葉に抗うすべを私は持ち合わせていなかった。
最高権力に誘われては仕方がない。私はこうべを垂れた。

ええい、ままよ!
私と社長はふたたび夜の闇へ身を投じた。
新潟の夜は熱く湿り気を帯びた。

by樋口